第4章

  銀行の判別分析と結果

  


それでは、判別分析を行う。分析を行うに当たって利用したツールは、Microsoft社の「EXCEL97」、そしてそのアドインソフトであるSSRI社(且ミ会情報サービス)の「エクセル統計2000 for Windows」である。利用したデータ一覧(スプレッドシート)は、巻末に付す。

スプレッドシートの縦軸は各銀行、横軸は各財務指標が並んでいる。これらデータが説明変数であり、の各に相当する。また、スプレッドシートの右端には「倒産」「非倒産」という文字が書いてある。これらが目的変数であり、に相当する。

それでは、線形判別関数による方法で判別分析を行う。具体的なEXCELでの操作方法については省略する。

 

4.1 線形判別関数による判別分析(財務指標12個)

まず前章3.2の終わりに列挙した、財務指標12指標全てを用いて分析を行ってみた。すると、判別分析を行うに当たっての前提条件である、2群の分散共分散行列の等分散性(倒産・非倒産の群同士を比較して、散らばりの大きさや相関が同じ)が認められなかった。分析結果の中では、「ボックスのM検定(等分散性の検定)」という欄に見られる。実際は、M検定は検定不能と表示された。

これは、2群を作るに当たって全ての説明変数からの情報をバランスよく加味するのは不可能であり、説明変数の組み合わせによっては、ある説明変数のみに判別関数式の説明力の殆ど全てを取られてしまい、他の説明変数が意味の無いものとなる事と関係する。この事自体は、「どの変数が最も倒産・非倒産を説明する変数として有効であるのか」が分かるため、良いのである。しかし、多くの説明変数を加味して倒産・非倒産を決める判別関数値、即ちZスコアを算出した時に、その値がどの銀行も近似していて不等分散である事はおかしい。なぜならば、本来銀行の財務内容は全て異なるわけだから、様々な説明変数を加味して算出したZスコアがあまりにも偏る事は少ない。もし、ある説明変数の説明力が強く、またその説明変数(財務指標)の各データ(各行の財務データ)が似通っているならば(A銀行とB銀行のデータがたまたま似ている)、不等分散の発生もありうる。

 

4.2 線形判別関数による判別分析(財務指標6個)

よって、データを変更するわけにはいかないため、説明変数を減らしてみる。また、相関マトリックスより、説明変数同士の相関関係が小さい、またはゼロ相関に近いものから変数を除外してみた。本来は層別散布図を描いて、説明変数同士の相関関係を見る事も重要であるが、ここでは省略する。その結果、最初の12指標から6指標減らした以下の判別結果に落ち着いた。(次ページより、結果一覧。表1)

 

 

 
 
     表1:判別分析結果出力
平均値 サンプル数 自己資本比率 ROA ROE代替指標 経常収支率 有価証券投資効率
倒産
5
-5.0977
-7.9413
-382.8388
357.3216
-4.4574
非倒産
10
5.3974
0.2887
105.7719
90.5881
11.9678
全 体
15
1.8990
-2.4546
-57.0983
179.4993
6.4927
標準偏差 サンプル数 自己資本比率 ROA ROE代替指標 経常収支率 有価証券投資効率
倒産
5
8.1594
7.2806
506.3755
260.0633
4.6460
非倒産
10
0.6005
0.0940
2.1195
3.4995
4.9471
全 体
15
6.8490
5.7207
372.1941
195.8644
9.1359
分散共分散マトリックス
全 体 自己資本比率 ROA ROE代替指標 経常収支率 有価証券投資効率 リスク管理債権比率
自己資本比率
46.9090
ROA
38.8962
32.7266
ROE代替指標
2361.7662
1923.2768
138528.4712
経常収支率
-1323.6310
-1113.7976
-66674.0557
38362.8620
有価証券投資効率
28.7136
21.7014
1062.3810
-650.8849
83.4642
リスク管理債権比率
-39.1021
-31.2829
-1790.1262
1055.6601
-48.2658
54.6194
倒産 自己資本比率 ROA ROE代替指標 経常収支率 有価証券投資効率 リスク管理債権比率
自己資本比率
66.5753
ROA
59.0981
53.0065
ROE代替指標
3667.5110
3088.6147
256416.1250
経常収支率
-2105.0039
-1877.2717
-113122.2031
67632.9453
有価証券投資効率
-30.0133
-25.1871
-2164.9038
973.4997
21.5852
リスク管理債権比率
-19.6136
-17.3453
-829.9630
686.6026
6.4819
30.9812
非倒産 自己資本比率 ROA ROE代替指標 経常収支率 有価証券投資効率 リスク管理債権比率
自己資本比率
0.3606
ROA
0.0038
0.0088
ROE代替指標
-0.4356
0.1817
4.4924
経常収支率
0.1813
-0.3196
-7.0457
12.2463
有価証券投資効率
0.6159
0.0856
0.8360
-2.6879
24.4739
リスク管理債権比率
-0.0872
-0.0157
-0.1596
0.9656
0.6708
1.6848
相関マトリックス
全 体 自己資本比率 ROA ROE代替指標 経常収支率 有価証券投資効率 リスク管理債権比率
自己資本比率
1.0000
ROA
0.9927
1.0000
ROE代替指標
0.9265
0.9033
1.0000
経常収支率
-0.9867
-0.9940
-0.9146
1.0000
有価証券投資効率
0.4589
0.4152
0.3124
-0.3637
1.0000
リスク管理債権比率
-0.7725
-0.7399
-0.6508
0.7293
-0.7149
1.0000
倒産 自己資本比率 ROA ROE代替指標 経常収支率 有価証券投資効率 リスク管理債権比率
自己資本比率
1.0000
ROA
0.9948
1.0000
ROE代替指標
0.8877
0.8378
1.0000
経常収支率
-0.9920
-0.9915
-0.8590
1.0000
有価証券投資効率
-0.7917
-0.7446
-0.9202
0.8057
1.0000
リスク管理債権比率
-0.4319
-0.4280
-0.2945
0.4743
0.2507
1.0000
非倒産 自己資本比率 ROA ROE代替指標 経常収支率 有価証券投資効率 リスク管理債権比率
自己資本比率
1.0000
ROA
0.0681
1.0000
ROE代替指標
-0.3422
0.9119
1.0000
経常収支率
0.0863
-0.9717
-0.9499
1.0000
有価証券投資効率
0.2073
0.1840
0.0797
-0.1553
1.0000
リスク管理債権比率
-0.1119
-0.1283
-0.0580
0.2126
0.1045
1.0000
ボックスのM検定(等分散性の検定)
χ2乗値
139.9758551
自 由 度
21
P  値
1.38128E-19
判  定
**
判別関数式 判別関数値
変数名 判別係数
自己資本比率
-1.3197
データ
真の群
関数値1
判別群
マハラノビス1
ROA
-3.2544
1
倒産
5.6063
倒産
9.3077
ROE代替指標
-0.0154
2
倒産
26.9682
倒産
9.6057
経常収支率
-0.1492
3
倒産
24.2167
倒産
10.3974
有価証券投資効率
-0.8865
4
倒産
24.3211
倒産
10.3926
リスク管理債権比率
1.4676
5
倒産
27.3805
倒産
10.3728
定数項
7.5528
6
非倒産
-30.9768
非倒産
68.1528
F 値
14.83662052
7
非倒産
-14.8312
非倒産
33.2120
自由度1
6
8
非倒産
-21.3729
非倒産
44.3524
自由度2
8
9
非倒産
-18.7626
非倒産
40.7025
P 値
0.0006
10
非倒産
-26.4979
非倒産
55.1370
マハラノビスの平方距離
43.39711761
11
非倒産
-18.9569
非倒産
39.5276
誤判別率
0.05%
12
非倒産
-15.4689
非倒産
32.6791
13
非倒産
-23.5783
非倒産
49.8763
14
非倒産
-25.7324
非倒産
52.5869
15
非倒産
-20.8077
非倒産
45.6682
判別の結果
見かけの的中率
           判別された群
倒産 非倒産
真の群
倒産
5
0
非倒産
0
10
判別的中率
100.00%
相関比
0.9175
 

  



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