クレジットカードを応用した電子決済

 
ースキームの概要と今後の展望ー
 
堤 千絵
総合政策学部3年 s94306ct@sfc.keio.ac.jp
岡部研究会研究報告書
1996年秋学期(1997年2月17日改訂)

本論文作成にあたっては、著者たちの面接インタビューに多くの方々が応じ て下さった。これらの方々に心より感謝したい。丁寧で適切なご指導をして下 さった岡部光明教授をはじめ、岡部研究会のメンバー、また、堤が執筆した本論文第2部に関しては、日本クレジット産業協会(会員部) の河崎克也氏、ならびにジェーシービー(企画部マルチメディア室)の大橋哲也 氏に心からお礼を申し上げたい。

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概要


情報通信技術の発展に関して、ここ数年話題になることの多いのが「電子マネー」 (electronic money)であり、昨年は日本でも数多くの実証実験が開始された。 電子マネーと一般に呼ばれているものは、現在取り組みが進められている新しい 電子的決済方法の総称であり、情報の保管・伝達に関して利用される技術から 「ICカード型」と「インターネット型」の二つに分けることができる。このうち とりわけネットワークの発達との結びつきが強いのがインターネット型電子決済で あり、その中で現在実用化に最も近いとみられるのが、クレジットカード を応用した電子決済(以下、電子クレジット決済と略称)である。電子クレジット 決済が普及してきたのは、クレジットカードの決済方法が電子的処理になじみやすい だけでなく、(1)特定の勘定を設定していない初めての店舗においても使用可能、 (2)24時間いつでも利用可能、(3)国際的なネットワークが発達しているため国際 的な決済も容易、(4)ネットワークに乗せる際の法的・制度的問題が少ないこと、 などクレジットカードの特色がそのままいかせることが挙げられる。その普及 に際して克服すべき最も大きな課題はカード情報等のセキュリティー(安全性) 確保である。その対応策としては様々な方法が考案されており、代表的なものとし て(1)インターネット上で一切カード情報を流さないことによって利用者に安心感 を与えることに成功したFirst Virtual、(2)強力な暗号によってセキュリティを 確保しているCyberCash、(3)認証制度を活用することで消費者、加盟店相互の 確認を可能にしたSET(Secure Electronic Transaction)、などが挙げられる。 また、セキュリティが確保されたとしても、信用付与の問題、加盟店問題、 小額決済に向かない、というクレジットカード決済に特有の問題はなお残る。 しかし、決済に際してはクレジット決済(売買時点から一定期間を経過してから の決済)需要は必ず存在するうえ、上記の問題は決済方法の工夫によってある 程度の問題は克服することができる。また、他の電子決済とも組合せを考えて いくならば、普及が促進されることになろう。
キーワード:ICカード、インターネット、電子決済、セキュリティ、
            与信、サービスの組合せ

目次

1 電子クレジット決済とは
1.1 「電子マネー」とは「電子決済」である
1.2 電子決済誕生の背景
1.3 電子決済の分類
1.4 実用化近い電子クレジット決済

 2 電子クレジット決済の特徴

2.1 クレジット決済の仕組み
2.2 実用化が進んでいる理由

 3 最大の課題であるセキュリティの確保

 4 代表的な電子クレジット決済

4.1 First Virtual
4.2 Cybercash
4.3 SET(Secure Electronic Transaction)

 5 残る課題

5.1 クレジット与信の問題
5.2 加盟店問題
5.3 少額決済に向かない

 6 今後の展望

6.1 電子クレジット決済への需要は存在
6.2 クレジット決済のシステムの中で工夫
6.3 他の電子決済との組み合わせ

 7 終わりに

 参考文献

 資料