証券取引所の国際的再編・統合に関する理論分析

 
 
総合政策学部3年 塚越博基
総合政策学部4年 小林龍一良
 

 

岡部研究プロジェクト研究報告書
2006年度秋学期(2007年2月改定)



 

本稿作成にあたっては丁寧で親切なご指導をしてくださった岡部光明教授(慶應義塾 大学総合政策学部)に深く感謝したい。また研究報告会議(2007 年1 月20 日、21 日) において有益な議論を交わすことのできた岡部研究会のメンバーにも感謝したい。有益 なアドバイスをくださった岡部研究会OB の千野剛司さん(東京証券取引所)にもこの 場を借りて改めて感謝の意を表したい。本論文はインターネット上においても全文アク セスおよびダウンロード可能である。(http://www.okabem.com/paper/) また、本稿に関するコメントや問題点等は、著者にご連絡いただきたい。
電子メールアドレス:塚越 s04568ht@sfc.keio.ac.jp、 小林 s04529rk@sfc.keio.ac.jp

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概要

 現在世界各国の証券取引所が国際化戦略を加速させている。具体的にはニューヨーク証券取引所を運営するNYSE グループがユーロネクストと合併することに加え、2006年の年末から2007 年の年初にかけてNASDAQ がロンドン証券取引所に敵対的TOBを実施した。東京証券取引所もNYSE グループと2007 年1 月31 日に戦略的提携に合意したほか、2007 年2 月23 日にはロンドン証券取引所と提携を合意するに至った。

 本稿では、まずそのような現状を整理し、次いで、どのような場合に証券取引所が再編・統合を選択するか、ということを経済学的なアプローチから理論分析を行った。まずグローバル化の進展により世界の証券市場において統合が進展していることを述べ、特に統合によって、証券取引に関連する各種の情報コストが削減できることが重要であることに言及した。次いで、一つの理論モデルを構成し、そこでは、投資家、企業、証券会社、証券取引所といった4 つの経済主体を想定した。ここで分析対象とした再編・統合の形態は、(@)投資家が異なる証券取引所に上場している企業に対して、証券会社を通じて取引ができるようになる、(A)企業は統合前と同じように自分が属している市場における証券取引所にのみ上場している、(B)証券取引所同士が証券会社を通じて投資家に提供する情報や、その情報を提供する体系や取引所運営システムの2 つにおいて提携を行う、の3 つ全てを満たすケースである。そして、@投資家の期待利潤最大化、A企業の費用最小化および利潤最大化、B金融市場(社債および株式市場)の均衡条件、の3 つを考慮した上で再編・統合前の証券取引所の利潤を導き出した。また、再編・統合がなされた後についても同様に証券取引所の利潤を導き出し、統合前後で比較することにより、どのような場合に証券取引所が再編・統合を選択するインセンティブを持つかを分析した。

 以上の結果、次の2 つが明らかになった。@証券取引所の利潤最大化という観点から見れば、お互いの証券市場の規模(有価証券取引総額)は、統合の是非に影響を及ぼさない。A以下に述べる3 つの条件を満たす場合に証券取引所は統合のインセンティブを持つ:(a)統合することで双方の市場における証券取引額の和が増えると予想される場合、(b) 情報関係収入(有価証券取引に伴う手数料収入)が証券取引所における情報やシステム体系の限界費用よりも多い場合、および(c)証券会社から得る取引参加料金が株式発行数や社債発行額の増加関数である場合。この分析の結果、1998 年のユーロ導入後に欧州圏で急速に証券取引所の統合が進んだ理由が理解できる。



キーワード: 証券取引所の再編・統合、証券市場のグローバル化、情報関係収入、取引参加料金
        
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