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3.4.3 むすび

ここでは,質的な人的資本の蓄積を,教育の普及と教育水準の改善の2つに分類した.まず,教育の普及を表す学校就学率取り上げた場合には,経済成長には正の寄与を与えるものの,東アジアの高成長を説明するには不十分であることが確認された.

次に,教育水準を表現すると考えられる政府教育支出と学校修学度を用いて分析をした場合は,教育修学度はほとんど有意な結果を得ることができなかった.他方,政府教育支出では,限定的ながら東アジアに収束現象が見られたのである.

以上の結果を踏まえてまとめると次のようになる.東アジアにおける高成長は質的な人的資本の蓄積による部分が理論的,そして経験的にも十分に考えられるが,その質的な人的資本を表す代理変数が不十分だということである.

ということは,今後経済成長と質的な人的資本の関係を分析しようとする場合には,より最適な指標を作成する必要があることになる.この点については,今後の課題としたいと思う.



Tomoya Horita
1999年11月02日 (火) 15時39分30秒 JST